ノームです。前回は、継続検査(いわゆる車検)が「有効期間が切れた後も車を使うときに受ける検査」だということを確認しました。→ 記事3
この記事を読むとわかること
- 建設機械(大型特殊自動車)の車検証の有効期間が何年か
- 「新車の初回車検は3年」と言われる理由と、建設機械との違い
- 条文を読むときに役立つ、接続詞「及び」(並列)のルール
では、自動車検査証の有効期間は何年なのか。これは第61条に書かれています。一緒に読んでいきましょう。
(法規の読み方のコツ①②は記事1を参照してください。)
第1項:基本の有効期間
(自動車検査証の有効期間) 第六十一条 自動車検査証の有効期間は、旅客を運送する自動車運送事業の用に供する自動車、貨物の運送の用に供する自動車及び国土交通省令で定める自家用自動車であつて、検査対象軽自動車以外のものにあつては一年、その他の自動車にあつては二年とする。
コツ①で、関係するところとそうでないところを選り分けていきます。
〈自動車検査証の有効期間は、〉これはOK。ちなみに、この塊が今回の主語です。
〈旅客を運送する自動車運送事業の用に供する自動車、〉→旅客(人)の運送となるとタクシーなどになり、建設機械は旅客を運搬するための車ではないので非該当です。
〈貨物の運送の用に供する自動車、〉→貨物というとトラックなどになり、建設機械は貨物を運送するための車ではないので非該当です。
〈国土交通省令で定める自家用自動車であつて、検査対象軽自動車以外のもの〉→ここは少し注意が必要です。「国土交通省令で定める自家用自動車」が具体的に何を指すのかは、道路運送車両法施行規則の第37条第1項に書かれています。確認してみましょう。
(法第六十一条第一項及び第二項第一号の国土交通省令で定める自家用自動車) 第三十七条 法第六十一条第一項の国土交通省令で定める自家用自動車は、次に掲げる自動車とする。 一 乗車定員十一人以上の自家用自動車 二 専ら幼児の運送を目的とする自家用自動車 三 第三十一条の三第二号の許可に係る自家用自動車
ここで1年とされている自家用自動車は、この3つ(乗車定員11人以上、幼児運送用、特定の許可に係るもの)だけです。建設機械(大型特殊自動車)は、このいずれにも当たりません。したがって、この部分にも該当しないことになります。
ここで一点、注意しておきたいことがあります。これは「建設機械は自家用自動車ではないから」という意味ではありません。建設機械も、自社で保有して使うものは自家用自動車に含まれます(実際、施行規則の別のところには「自家用大型特殊自動車」という言葉も出てきます)。ただ、第61条第1項で1年と定められているのは上記の特定の自家用自動車に限られていて、建設機械はそこに入っていない、ということなんですね。
(この「自家用自動車」という言葉が法令上どういう意味なのかは、実は道路運送車両法に定義が見当たらず、少し調べがいのある話です。点検整備シリーズで詳しく扱う予定です。)
よって、〈その他の自動車〉に該当し、「にあつては二年とする。」ということから、大型特殊自動車である建設機械は、2年で車検が切れるように読めます。
ちなみに、ここにも法規を読む接続詞のルールがあります。「〇〇、〇〇、…及び〇〇」という並列の形です。英語でいうandですね。これを意識して再度読むと、上記の区切り方を理解しやすいかと思います。
なお、ここでも記事1で説明した「〇〇の用に供する」(=〇〇のために使う、という使用用途の話)が出てきますね。そのため、ホイールローダーなどは「人が乗って移動することになるから旅客の運送に該当するのかな?」と思ったこともあったのですが、非該当になるようです。この辺りは少し調べたので、別記事であらためて取り上げる予定です。
第2項:初回の特例(建設機械は対象外)
さて、第1項が終わり、車検の期間(2年)も分かりました。「あとは第2項に特殊なケースが書かれているだけだろう」と一息ついたのですが、実は第2項には、建設機械にも関わってきそうな話が書かれていました。さっそく読んでいきましょう。
第2項には「号」というものが出てきます。号とは、条や項の中で、いくつかの項目を箇条書きのように並べるときに使う単位です。「一」「二」…と番号がふられて並びます(項の中をさらに細かく分けたもの、というイメージです)。条・項・号の関係については、別記事で説明する予定です。
まず、各号の前にある柱書(はしらがき)を読みます。柱書とは、号が並ぶ条文で、それぞれの号に共通してかかる前置きの文のことです。「次の各号に掲げる〜」のように始まり、そのあとに第一号、第二号…と具体的な中身が続きます。
2 次の各号に掲げる自動車について、初めて前条第一項又は第七十一条第四項の規定により自動車検査証を交付する場合においては、前項の規定にかかわらず、当該自動車検査証の有効期間は、それぞれ当該各号に掲げる期間とする。
〈次の各号に掲げる自動車について〉→この第2項の下にくる各号に書かれている自動車のことですね。
〈初めて前条第一項又は第七十一条第四項の規定により自動車検査証を交付する場合においては、〉→「又は」があるので区切っていきます。
ここで一つポイントです。「又は」で並列にしているものは、大きさ(レベル)を揃えて括る、という点です。仮に〈初めて前条第一項〉又は〈第七十一条第四項〉と区切ると、「又は」の前後で大きさが揃いません。なので、今回は「条・項」という同じ単位で揃えて、こう区切りました。
初めて〈前条第一項〉又は〈第七十一条第四項〉の規定により自動車検査証を交付する場合においては、
「前条第一項」とは、記事2で読んだ第60条第1項のことですね。新規検査に合格して自動車検査証が交付される、あの規定です。
では、「第七十一条第四項」とは何でしょうか?調べてみると、第71条は「予備検査」という検査について定めた条文でした。これは新規検査とは別のルートで検査証の交付を受ける場合の話で、少し専門的になるので、ここでは「新規検査とは別に、予備検査というルートもあるんだな」と押さえるに留めます。予備検査については、別記事で取り上げる予定です。
つまり第2項の柱書は、「新規検査ルート(第60条第1項)または予備検査ルート(第71条第4項)で、初めて自動車検査証を交付する場合は、初回に限って有効期間を各号のとおりにする」と言っているわけですね。
では、各号を読みます。
一 前項の規定により自動車検査証の有効期間を一年とされる自動車のうち車両総重量八トン未満の貨物の運送の用に供する自動車及び国土交通省令で定める自家用自動車であるもの 二年
〈前項の規定により自動車検査証の有効期間を一年とされる自動車のうち〉→「前項」とは第61条第1項です。建設機械は有効期間が2年とされていたので、ここに該当しません。よってこの号は関係ないですね。
二 前項の規定により自動車検査証の有効期間を二年とされる自動車のうち自家用乗用自動車(人の運送の用に供する自家用自動車であつて、国土交通省令で定めるものを除く。)及び二輪の小型自動車であるもの 三年
〈前項の規定により自動車検査証の有効期間を二年とされる自動車のうち〉→ここまでは建設機械も該当します。
「及び」が出たので、区切りを入れます。
〈自家用乗用自動車(人の運送の用に供する自家用自動車であつて、国土交通省令で定めるものを除く。)〉及び〈二輪の小型自動車であるもの〉
どちらも建設機械は該当しないので、この号も飛ばします。
なお、よく「新車の初回車検は3年」と言われますよね。これは、私たちが自分で買って乗る自家用車(自家用乗用自動車)がこの第二号に該当するためです。第二号にあてはまる車は、初回に限って有効期間が3年になる、というわけですね。一方で、建設機械(大型特殊自動車)は自家用乗用自動車ではないので、この特例の対象にはなりません。
(念のため、第二号の括弧書き「人の運送の用に供する自家用自動車であつて、国土交通省令で定めるものを除く。」の中身も確認しておきます。この省令は施行規則第37条第3項で、除かれるものが列挙されており、その第七号に「自家用大型特殊自動車」が明記されています。つまり、仮にホイールローダーを「人が乗って移動するから人の運送では?」と整理したとしても、自家用の大型特殊自動車は条文上、明文でこの3年特例から除かれています。結論は動きません。)
ということで、第2項は初回の継続検査の期間が特例として長くなる規定でしたが、建設機械は対象外、ということがわかりました。第1項どおり、建設機械の有効期間は初回から2年のままです。
第3項・第4項:建設機械には関係が薄い部分
第61条には、このあと第3項と第4項もあります。ただ、どちらも建設機械の通常の車検の流れには直接関わってこない、特殊なケースの規定です。
- 第3項:国が、検査証を交付するときに「この車は有効期間の途中で保安基準に適合しなくなりそうだ」と認める場合に、有効期間を短縮できる、という規定。
- 第4項:自動車検査証の再交付(第70条)に関する規定。
いずれも今回の本筋からは外れるので、ここでは「こういう例外規定もあるんだな」という程度に留めます。
まとめ(記事4・車検シリーズの締め)
今回わかったことを整理します。
- 建設機械(大型特殊自動車)の自動車検査証の有効期間は、初回も含めて2年(第61条)。
- 「新車の初回車検は3年」というのは自家用乗用車などの特例(第61条第2項第二号)で、建設機械は対象外。
そして、ここまでの車検シリーズ全体をまとめると、こうなります。
- 「車検」も「自動車検査登録制度」も通称で、法律が定めているのは「登録」(第二章)と「検査」(第五章)。普段「車検」と呼んでいるのは主に継続検査(第62条)。
- 建設機械(大型特殊自動車)は登録が必要で、検査の対象でもある。
- 検査には新規検査(第59条)と継続検査(第62条)などがある。新規検査は新車などを初めて使うとき、継続検査は有効期間が切れた後も使い続けるときに受ける。
- 検査に合格すると、保安基準に適合していることが確認され、自動車検査証が交付される(第60条)。
- 建設機械の自動車検査証の有効期間は、初回も含めて2年(第61条)。
つまり、「車検とは何をやるのか」をひとことで言えば、その自動車が保安基準に適合しているかを国が確認し、適合していれば自動車検査証を交付(更新)する手続き、ということになります。
次のテーマ
車検に関連して、まだ2つの大きなテーマが残っています。
ひとつは、検査で具体的に何をチェックするのか、という「保安基準」の中身です。ブレーキや灯火類など、車が満たすべき基準が細かく定められています。これは別記事で取り上げる予定です。
もうひとつは、点検整備です。実は「車検」と「点検整備」は別のものです。よく「車検に出したから点検もバッチリ」と思われがちですが、法律上は、検査(車検)とは別に、使用者には日常点検や定期点検が義務づけられています。この点検整備についても、別記事で詳しく取り上げる予定です。
次回もまた、一緒に条文を読み解いていきましょう。
車検シリーズ
- 車検とは?|建設機械と道路運送車両法を一緒に読む
- 新規検査とは|建設機械を初めて使うときの検査(第58条〜第60条)
- 継続検査とは|いわゆる「車検」の正体(第62条)
- 車検証の有効期間は何年?|建設機械の場合(第61条)(この記事)